優勝戦

2015年03月22日

幸福感。まだ浅い私のボートレース人生の中で、ボート界の新たな歴史が始まった瞬間に立ち会えたかもしれない、という幸福感に私は包まれた。
 
進入は124/356。ピット離れ良く飛び出した4号艇仲口博崇が一つ内のコースへ。レース前には動きがあるかもしれないと思われた5号艇守田俊介と6号艇石野貴之は各々のコースで勝負を決めていた。進む大時計。ゼロへ向けて各艇が航跡を上げる。

明らかに付いていけない。4号艇仲口博崇が他艇のスピードに付いて行けていない。荒れる。これは荒れるかもしれないという雰囲気に体は緊張感が増す。2号艇毒島誠も遅れているのか。スロー勢が遅れて見える中、1号艇桐生順平だけが飛び出している。速いのか。大丈夫なのか。そんなことを思ってしまうほど1号艇が飛び出しているように見えた。

注目のST。最内1号艇と大外6号艇石野貴之が飛び出す。その隊形はセンターに寄るに連れ凹んでいた。壁なしの形。俄然外枠勢が攻め立てていくように見えた。その中でも筆頭は4カドとなった3号艇中澤和志。埼玉支部で桐生順平の先輩だ。そして全ファンが待ち焦がれた、第50回ボートレースクラシックの1周1Mが訪れた。

先マイを放つは桐生順平。壁なしながらもキッチリ、しっかりと旋回体勢を整えた。それを見据えて攻めてきたのはやはり中澤和志だ。相手が後輩だろうと最高峰の世界で全力を尽くさない訳がない。毒島誠の頭を叩いて渾身の捲り差しを差し込む。入ったか。一気に視線は向こう正面に注がれる。直線立ち上がり。スッと内に締め込む先マイ桐生順平。その差を見て外へ引いたのは中澤和志。適格で冷静な判断だった。

恐らくあのまま強引に競り合っても十中八九、勝利は桐生順平。あのような形で競り合って事故が起こるケースも過去には見てきた。そのようなことだけは無いように直線勝負は諦めたようにも感じた。特に前を行くのが桐生順平だったからこそ中澤和志は余計に冷静になれたのかもしれない。だがしかし優勝を諦めたわけでは無かった。

1周2M。最後のチャンスとばかりに中澤和志が桐生順平の懐を狙うが敢え無く不発。ここで1号艇桐生順平が抜けだした。こうして壁無しトップSTから文句なしのイン逃げを決めた桐生順平が、第50回SGボートレースクラシックを手にした。

若干28歳ながらSG制覇を期待される存在にまで成長。大舞台での活躍が自身の期待を引き上げた。昨年はヤングダービーでG1初制覇。そして更なる飛躍を目指す今年は真っ先にSGを戴冠してしまった。SGを制覇してから覚醒する選手は少なくない。このSG制覇が桐生順平に何をもたらすのか。もし、このSG制覇が桐生順平に更なる強さをもたらすとするのならば、歴史的に名を残すレーサーになるのは間違いない。そんな新たな歴史の瞬間が始まると共に、SG第50回ボートレースクラシックが終了した。



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その若さで次は何を見据える。ボートレースはいよいよ新時代突入か。
 

2014年12月24日

 世代交代。無情な暗闇と未来への明るい光を併せ持つその瞬間は必ずいつか訪れる。舞台は14年ぶりにグランプリ開催となる平和島。2014年ボートレース界の集大成となる一戦が晴れやかな空のもとで行われた。レース前から始まっている各々の一挙手一投足が、グランプリという栄冠と一億円という破格の賞金をたぐり寄せる運命となる。

 優勝戦、最初のターニングポイントとなる進入争い。ここでのキーマンとなるであろう外枠に構える5号艇石野貴之と6号艇茅原悠紀は覚悟を決めていた。コース争いをしない枠なり進入。外枠勢二者はこれまでに自身が辿ってきた道を受け入れた。陥ってしまったイバラの道に抗うことはなく己の力を信じた。こうして123/456というスタンダードな進入隊形でレースは時間が流れる・・・はずだった。

 スタートまで残り約33秒。平和島から世界の時間が一瞬止まる。時間を止めたのは3号艇太田和美。3コーススローと思われていた3号艇が舳先をダッシュに向けただけで世界を止めてしまう。これがボートレースの魅せる不思議な力だ。一瞬止まった時間が流れだすとスタンドは嘆き・歓喜・驚愕といった様々な感情が入り乱れた歓声がわく。このフライングという致命的ミスが許されない大一番で、3号艇太田和美はスタートが難しいと言われているリスキーな3コースカド戦を選択したのだ。

 12/3456という完全に不意をつかれた変則隊形でグランプリは終焉へ向かう。各艇の航跡が運命を切り開くためのスリットへとスピード上げる。心臓の高鳴りが最高潮を迎えると共に大時計の針がゼロを指す。と同時に目に飛び込んできたのは、攻勢なスタートを成功させたセンター勢。イチかバチかの3カドを選択した3号艇太田和美がバッチリとスタートを決めると、隣の艇界最強のスリットマシーン4号艇菊地孝平も負けじと飛び出していく。と同時にスローを選択した1号艇白井英治と2号艇井口佳典が僅かに劣勢に見えた。

 襲いかかるセンター勢に伸び返したいスロー勢。スリットを通りすぎてから1周1Mまでの直線距離がいつもより長く感じた。これはセンター勢の優勢を感じたからこその錯覚か。グイグイ伸びていく。3号艇太田和美が今節幾度と無く見せてきたパワーを遺憾なく見せつけ伸びていく。ノマれる。1号艇白井英治と2号艇井口佳典はノマれる。と確信した瞬間、2号艇井口佳典が僅かな奇跡に繋げるべく伸び返した。これがグランプリへの執念。

 そして1周1M直前、執念と執念と執念がぶつかるように内枠3艇がもつれながら旋回を開始する。すると開く。空いた水面に勝利への扉が開く。劣勢に陥り始めた内枠3艇を見据えていたのは外枠3艇。4号艇菊地孝平、5号艇石野貴之、6号艇茅原悠紀だ。外からは真っ暗だった水面に光が差し込み始めた。大きな光が見え始めたのは4号艇菊地孝平だ。

 自身が求めていたカドは手に入らなかった。だがしかしカドを手にした3号艇太田和美が結果としてはチャンスをくれた。4号艇菊地孝平の目にはもつれる内枠3艇だけが映しだされていた。いつも通りにやれれば。だがしかし、聡明な計算とは裏腹に誤算が生じたのは1号艇白井英治の動きだった。4号艇菊地孝平は僅かに1号艇白井英治と接触。バランスを崩しながらも向こう正面を先頭で突き抜けたか。ボートが僅かに浮いた。スムーズにはいかなかった。だが突き抜けたはず。

 5号艇石野貴之がごちゃつく艇団切り裂こうとスピードを乗せた旋回で突っ込む。しかし5号艇石野貴之の道にはコントロールを失った2号艇井口佳典が流れてきてしまう。無情にも接触。5号艇石野貴之の選んだ道には運が足りなかった。ボート一つ分のスペースがあれば未来は変わっていた。

 最後の最後まで待たされて、溜めていたパワーを一気に放出するように旋回を開始したのが大外6号艇茅原悠紀だ。結果的に溜めたのが功を奏した。自身の旋回ルートには引き波だけ。障害となる艇は見当たらなかった。覚醒した爆発的なスピードターンが最内を切り裂く。すると鮮やかな緑の影は、一瞬にして向こう正面に到達すると、先に前を進む4号艇菊地孝平に追いついた。そして、その加速していく様は他艇とは明らかに違う次元を進んでいた。

 向こう正面を抜けて止まらない6号艇茅原悠紀。最後の抵抗。1周2Mでは最後の可能性に賭けるべく、捨て身覚悟で3号艇太田和美が切り返し気味にボートを追っ付ける。だがしかし、ここでも6号艇茅原悠紀は完璧なスピード旋回で3号艇太田和美を包み込むと、ホーム直線では完全にグランプリという栄冠を掴んでいた。後は歓声の中を突き進むだけだった。

 こうして今グランプリ参加選手の中で最も若い27歳の茅原悠紀が新たな時代を到来させ、ボートレース界最大の大会は幕を下ろした。最後に最高峰に相応しいレースを見せてくれた優勝戦出場六名に感謝。特に最も悔しいであろう二人である白井英治と菊地孝平の表彰式での対応は素晴らしかったです。絶対に近い将来この二人にはグランプリを制覇してほしいと強く思いました。ボートレース最高です!


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2014年11月30日

 年末の大一番『賞金王決定戦競走』へのラストチャンスとなるファンファーレが下関の雨空に鳴り響く。ピット離れは全艇互角。各々覚悟は決まっているかのように枠なりで待機行動は進む。そして123/456というスタンダードな隊形で全艇がラストチャンスへ加速する。

 勝負が見えてくる注目のスリット。ピタッと横並びの1234、若干遅れ気味の56という隊形でSTラインを通過。こうなると断然有利なのは1号艇太田和美。今大会が始まる前から繰り返し騒がれた『超抜機』に『怪物太田和美』という組み合わせはこの時点での太田和美の勝率を95%に跳ね上げる。残りの5%の可能性に太田和美以外の他艇は全身全霊を捧げることとなった。

 最高峰が激突する1周1M。若さ一番3号艇茅原悠紀が先陣を切って太田和美に挑む。今大会の茅原悠紀は大器の片鱗しか感じさせない旋回を幾度と無く披露。それは太田和美の牙城を崩しかねないと多くの者を感じさせた。しかし今大会の太田和美の強大なパワーは茅原悠紀のそれを完全に凌駕。太田和美のスキを見せない1Mでのターンは意図も簡単に見えるほどあっさりと茅原悠紀との勝負にかたをつけた。この時点で抜け出しを図りかけていた太田和美の位置には4号艇菊地孝平、5号艇井口佳典、6号艇吉田俊彦らは遠すぎた。早々と僅かな最後の可能性は2号艇濱野谷憲吾に絞られた。

 東都史上最高最強のエース濱野谷憲吾。地元平和島で14年ぶりに行われる『賞金王決定戦競走』に出場できないなんてことが・・・。いやきっと奇跡を起こしてくれる。そんな不安と期待を一身に追い込まれた濱野谷憲吾が平和島への滑りこみを狙うラストターンに挑んだ。きっと太田和美への最短距離、最高なターンを狙ったはずだった。が悲劇。東都最後の期待は無情にもターンマークに激突。ボートは宙に跳ね上がり大きく減速。この瞬間、、濱野谷憲吾が挑んだ賞金王決定戦競走への道は閉ざされた。そして同時に太田和美の優勝が決定的となった。

 こうして太田和美が堂々のシリーズリーダーからチャレンジカップ初制覇。今年SG3回目の優出で3年連続となるSG制覇&SGV7を飾る。確固たる技術に百戦錬磨の精神力を纏うその姿は正に怪物。太田和美が前検から最終日優勝戦まで圧倒的パフォーマンスで締めくくり第17回チャレンジカップは幕を下ろした。


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太田和美の優勝に異議無しです!やはりSGは最高峰の激突でした!

2014年10月20日

SG第61回ボートレースダービー(全日本選手権)優勝戦。展示から4号艇池田浩二が前付けに動く。これは予想外だった。池田浩二が4カドを捨て2コースを選ぶ光景は初めて見る。どういう真意が池田浩二にあったのか。機力差を埋めるためのなのか、それとも前回のMB記念の時のように同支部で力を結束させたのか。

薄暗い中雨の雫が飛び跳ねる常滑水面。様々な思惑が交差する中本番レースが始まる。展示同様に池田浩二は動いて142/356の隊形に。動く大時計に起こしが深くなる内側愛知支部の2艇。徐々に難しくなるSTに緊張が走る。その緊張感がピークに向かうようにして全艇がSTラインへスピードを上げる。そして注目のスリットは全艇ほぼ横並び。深くなった愛知勢もしっかりとSTを踏み込んだ。

こうなると断然強くなるのは内側勢か。そのまま目立つ艇もなく1周1Mへ向かう。しっかりとイン先マイを放つ1号艇仲口博崇。他の者はあまりにもSTが揃いすぎていて攻めあぐねているようだった。そして向こう正面を突き抜ける韋駄天について来れるものは皆無だった。
 
悲願成就。1号艇仲口博崇が四日目から1号艇で3連勝をしっかりと決めて全日本選手権を制した。最後まで猛追した2号艇茅原悠紀が2着。3着に道中抜けだした3号艇菊地孝平。5号艇井口佳典、6号艇平尾崇典たちの出番は無かった。
 
モーター抽選から導かれるように好機を引き当て、予選道中もミスすること無くシリーズリーダー。そして最後も難しいSTになりながらもしっかりと踏み込み優勝を決める。こうして地元愛知で仲口博崇がSGウィナーとなり第61回全日本選手権は幕を閉じた。

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2014年08月31日

感動のスタート。山口支部が1・2・3号艇を独占する異常事態。初めて目撃する光景に昨夜からの妄想は止まらない。これから何が起こるのか。早く知りたいような知りたくないような。特別なレースで幾度と遭遇してきた独特な高鳴りが蘇る。

本番開始。ピット離れは綺麗に揃う。そして煌めく水面に登場するカラフルな6艇。ゆっくりと各艇が決意のままに進入コースを決めていく。 もちろんインに構えるのは1号艇谷村一哉。譲るはずがない。まずはピット離れから普段の様にレースを迎えることができることに一安心。SG初優出が1号艇。緊張は計り知れない。

次に2コースへ2号艇白井英治がゆっくりと向かう。今回のこのレースで一番ファンの視線が注がれている選手なのはこの人だろう。悲願、悲願、と白井英治にはこの言葉がつきまとう。
そして3コースにゆっくりと3号艇寺田祥が・・・いない。というか引いた!後方にボートを引いたのだ!サプライズ。完全に意表をつかれた。想像を遥かに超える光景がすでに進入から広がっていた。

本気だ。寺田祥が本気で勝ちに来た。私の考えは甘すぎた。正直山口勢の内枠トリオは最低でも山口勢の誰かが優勝を目指し、安全安定なレースを繰り広げると想像していた。そんな素人の考えを一蹴するプロフェッショナル達。凄すぎる。そして私の頭はパニック状態。どうなるのこのレース!?

こうして12/3456という変則スタイルで航跡をあげる各艇。私の視線は完全に3カド寺田祥に奪われている。難しい3カドでのSTを決めることができなければ内枠山口勢は壁を失う。それはすなわち外枠勢の猛攻が山口勢を襲うことになる。悪夢の山口勢共倒れ。なんてこともあるのか・・・。
STラインに向かうダッシュ勢の寺田祥。うん、遅れてない、大丈夫だ。というか凄いことになっている!山口勢の3人が飛び出していく!というか白井英治が飛び出していく!

感動のスリット。最高のスリット。鳥肌が立つスリット。とにかく凄いスリットだった。2号艇白井英治が1号艇谷村一哉よりも半艇身飛び出す。画面の角度的にはすでに一艇身飛び出している。これは・・・勝ちだ。
白井英治の勝ちだ。ここからの白井の伸びについていける艇などこの水面には存在しない。1周1Mまでに98%白井の優勝を確信。そして白井は確実に内の谷村一哉を仕留め、1周1Mをしっかりとターン。ここで数値はほぼ100%に達成。白井英治の悲願成就。無冠の帝王返上だ。

2着以降も激しい最高峰の戦いが繰り広げられたのだが、それはもうどうでもいい。とにかく嬉しい嬉しい白井英治のSG初制覇。しかも後に知る白井英治のSTタイミングは『0.00』。
1号艇谷村一哉も『0.07』と凄い攻め。SG初優出1号艇F持ちを考えれば100点に近い。
3カド寺田祥も『0.07』とこれも凄い。ぶっつけ本番でこれ。プロ。真のエンターティナー。
けど白井は『0.00』。神降臨。これはもう風、波、強いていうなら地球の自転・公転、更に強いていうのなら宇宙の誕生、全てがピッタリ白井英治に味方したのだ。

こうして私にとって感動的なレースで幕を閉じた第60回ボートレースメモリアル(MB記念)。節間のアクシデント時には、また繰り返してしまうのか・・・などという私の考えは見事に愚考となり優勝は白井英治。しかし白井英治にとってはこれからが開幕。一つとればポンポンとVを積み上げていく。そんな予感を感じさせてくれる白井英治SG怒涛の優勝編が開幕したかもしれない、などと期待しつつ若松の夜に歴史的な瞬間ありがとう。

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最初のサプライズ。3号艇寺田祥が3カドに。The最高峰。

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うん、寺田選手大丈夫。てか白井英治飛び出してるー!

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遂にこの日が・・・。

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向こう正面。この時白井は何を思うのか・・・。

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3着争い。3号艇寺田祥選手と5号艇池田浩二選手も凄かった。The最高峰

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最終2Mの白井英治選手。ダイナミックに何を思う・・・。

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おめでとうございます。かっこ良い。




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2011年秋からボートレースにハマってます。新参者です。ボートとラジオと海外ドラマによって体が構成されています。自分の目から見えるボートの世界を呟きます。
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