2015年08月30日

第61回ボートレースメモリアル 優勝戦

いつもより早い夏の終わりを感じさせる肌寒い風がつつむ蒲郡。しかし、そんな風をよそに蒲郡の温度は上がり続けた。その熱が最高点に達した時、歴史的なレースがここに生まれた。

SG第61回ボートレースメモリアル優勝戦。ファンファーレが鳴り響きピットから選ばれし最高峰のレーサー6名が飛び出した。進入争いは見られず。展示同様の静けさで、漆黒の水面に6つのボートが漂う。1号艇でこの状況を迎えられた峰竜太は何を感じていたのだろう。

予選最終日から3戦連続となる1号艇。数多のSGウィナーが突き進んだVロードを歩む峰竜太。彼もその仲間入りを遂げるはずだった。はずだったのに・・・。

1号艇峰竜太がコンマ05のトップスタートを切る。今節も尻上がりに合わせてきた超人的感覚は優勝戦でも研ぎ澄まされていた。六日間の集大成を振り絞り始める。しかし、1周1Mにそれが起こる。予選のイン戦から気になっていたという、ターンマークもれがここでも起きてしまった。

昨日の準優では辛うじてこの状況でも中島孝平の差しを凌ぎきれた。だがしかし、SGの優勝戦という舞台においてこのターンでは許されなかった。すかさず差し込んできたのは2号艇篠崎元志だった。

今節の篠崎元志は素人目にも見える雰囲気を持っていた。その雰囲気というのは余裕があるというような、冷静というような、最高のリラックス状態というか、なんとも言い表せない妙なものだった。とにかく歴戦の大物レーサーが持ち得るものに見えた。

一昨年のこの舞台、篠崎元志は優勝戦でフライングという最も重い十字架を背負った。その影響は確実に近況までのレースに現れていた。未だに払拭できているのかすら分からないぐらの深い傷。しかし、篠崎元志はその傷を背負いながらもコンマ06のスタートを決めた。

篠崎元志が迎えた1周1M。完璧とは言えない峰竜太の懐に全身全霊を込めた差しを撃ち込んだ。そして、この差しは峰竜太の懐をガッチリと深く捕らえた。大歓声が向こう正面の若獅子たちの一騎打ちを包み込む。

内に篠崎元志、外に峰竜太。ほぼ、普通ならば篠崎元志が圧倒的優勢。1周2Mをいつも通りに回るだけだった。しかし、この若獅子たちの一騎打ちにスパイスを与えたのは正真正銘のSGレーサー5号艇中島孝平。SGVの難しさを知るSGレーサーが、二人の若獅子たちに甘い思いを許すわけにはいかなかった。

彼も予選序盤では久しぶりのSGVを感じさせるほどの鋭さだった。その中島孝平が1周2Mでは篠崎元志に試練を与える内側からのプレッシャー。というより、中島孝平は自身の小旋回には絶対的な自信があるはずだ。これを捌ききれなかった瞬間、中島孝平が一気にトップに立っただろう。

2号艇にプレッシャーを与える5号艇。この光景を大外から見据えていた1号艇峰竜太にはどう見えていたのだろう。正にこの光景は2013年オーシャンカップ、真夏の夜のあの時だ。あの時の松井繁の位置に自身がいるのだ。となれば、やるべきことは一つしかない。あの時の松井繁のように前を行く2号艇を全速で差し返すしかないのだ。

先マイする篠崎元志。若干窮屈な旋回。そこにあの時の松井繁よりも鋭く、激しく全速の差しを撃ち込めたのは峰竜太。見事に再現した。今度は2013年を彷彿とさせる差し返しが篠崎元志の懐に深く突き刺さる。とうとう峰竜太にその日が訪れたのだと感じた。しかし、2013年の峰同様、ここで諦めるわけにはいかなかったのが篠崎元志だ。

2周1M。この差があれば峰竜太がいつも通りにターンをすることができたのなら、捕まえられる者はそうそういなかった。だが、なぜだろう。これがSGVのプレッシャーなのか。峰竜太はいつも通りのことができなかった。またしても1周目同様にターンマークをもらすと、今度はターンの出口では不安定にボートが暴れる。この瞬間、逆に篠崎元志は普通以上、いや最高のターンを繰り出した。

2周目の向こう正面でもガッチリと峰竜太の懐を捕らえた。同年代の最高峰、峰竜太と篠崎元志が並走のまま、更なる逆転が生まれる予感がしていた2周2Mを迎える。差すか、ツケマイか、峰竜太がどちらとも思えるタイミングでターン動作を始めて篠崎元志を揺さぶる。だがしかし、その時点で篠崎元志の集中力は乱れを整え、トップレーサーが見せるゾーンに入っていた。

瞬時に峰竜太の動きを見切ると、冷静機敏に対応、付け入るスキは完全にゼロだった。篠崎元志が歴史的なレースに終止符を打つと、ゴールでは何度も何度も喜びを爆発させた。幾多のレーサーが囚われては抜け出せずにいたジンクスを打ち破った篠崎元志。一方で、またしても嫌な流れに入り込んでしまった峰竜太。彼らの道は別れた。

とにもかくにも、自身も口にしていた真のSGタイトルを獲得した篠崎元志。彼が次世代のボートレースを率いるリーダーの資質を一番有しているだろう。今後の篠崎元志の大飛躍の始まりと共に、夏の終わりの祭典は幕を閉じた。




 



 

コメント一覧

1. Posted by 新F   2015年09月01日 12:16
本場で観ていて、とてもアツくなるレースでした。抜きつ抜かれつのレースを目のあたりに、すげえすげえ!と叫ぶのみでした。
1周2マークで峰くんが差し返したときは、2艇身ほど出たので、ああ、おめでとう。125いただきありがとうと思っていたら、まだドラマがあるとは。
あとで、リプレイを見返すと、元志は中島を牽制しつつ、あのターンを繰り出したので、よく残したんだと思います。レース勘が非常にあると思いましたね。イケメンには何をやらせてもやるもんだな、と実感した瞬間でした。
今回は何度でも本場に足を運びたくさせるような優勝戦でした。
4点に絞っての215が転がり込んで、節間の敗けを取り返せたのもよかったです。
2. Posted by とくなが   2015年09月01日 14:44
あんな歴史的なレースを生で見れたことは一生の思い出になりますね。伝説となっている丸岡VS瓜生のダービーや、中道VS植木の賞金王に匹敵するのではないでしょうか。そして舟券も4点でとるとはお見事です。私は24点かかってしまいました。出走表のトップスリーで買っとおけばよかっただけなのですが、ボートはそんなに甘くはないのは重々承知していたので、つい多点買いになってしまいました。私もいつかあんな伝説的なSG優勝戦を生で見てみたいものです。また次回も頑張りましょう!

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2011年秋からボートレースにハマってます。新参者です。ボートとラジオと海外ドラマによって体が構成されています。自分の目から見えるボートの世界を呟きます。
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